
ウサギさんは東京の会社で貿易のお手伝いをしています。
貿易のお仕事は専門用語が多いですが、フクロウ博士に教えてもらい、少しずつ用語も理解できてきたようです。今回はよく聞くB/LやWAYBILLといったワードについて、違いを勉強していきましょう。
B/Lってなんだろう?

貿易のお手伝いを始めて、最近はよく聞く書類はなんとなくわかってきました。
インボイス、パッキングリスト、B/Lは本当によく出てくるので、貿易に必要不可欠な書類だなと感じます。
でも、インボイス、パッキング(※詳しくはTIPS①参照)はまだわかりやすいのですが、B/Lは少しややこしい感じですよね。



B/LとはBill of Ladingの略で、日本語だと「船荷証券」のことじゃの。



B/Lは船社が発行する書類で、B/Lを持っている人が、貨物の持ち主だという証明になるという話を聞いたんですが……



ウサギさんの言うとおり、船社が発行する書類じゃ。
B/Lは貨物の持ち主だという証明にもなるし、荷主が船社との間の運送契約を結んだことの証明にもなる書類じゃ。
有価証券(財産的価値のある権利を表す証券や証書)でもあるから、とても重要な書類のひとつじゃ。
オリジナルB/LとサレンダーB/L



ウサギさんは、B/Lのどんな点がややこしいと感じるんじゃ?



B/Lは種類がたくさんあるみたいなんです。
オリジナルB/Lとか、サレンダーB/Lとか……それにWaybill?とかいう書類も出てきて、もう頭の中がごちゃごちゃです。



確かに、そのあたりの違いはわかりづらいのう。
まず、「オリジナルB/L」と「サレンダーB/L」の違いじゃ。
「オリジナルB/L」は、B/L原本のことじゃ。



コピーじゃないってことですね。



一方の「サレンダーB/L」は、「元地回収されたB/L」という意味じゃ。
“SURRENDERED”や”TELEX RELEASE”、”ACCOMPLISHED”などのスタンプがオリジナルB/Lに押印され、その押印されたオリジナルB/LをコピーしたものをサレンダーB/Lと呼ぶのう。



「サレンダーB/L」という名前の特別なB/Lがあるわけではないんですね。



あくまでサレンダーというのはB/Lの処理方式のひとつじゃ。



元地回収って何ですか?



元地回収を知るには、まずB/Lの動きを把握する必要があるのう。
船が積み地から揚げ地に向かうように、荷主はB/L原本を積み地(輸出地)で入手し、揚げ地(輸入地)へ持ち込む必要がある。
流れにすると、
船に貨物を積んだら、積み地で船社が荷主にB/Lを発行する。
船で貨物を運んでいる間は、貨物は船社のところにある状態。
船が揚げ地に到着したら、荷主は揚げ地の船社にB/Lを持ち込んで、貨物が自分のものだと証明して引き取ることができる。
つまりオリジナルB/Lは、輸出者が郵送などして、輸入者に原本を届けてあげる必要があるんじゃ。そこでちょっとした不便が出てくることがあるんじゃ。
ヨーロッパなど遠いところから日本へ輸入する際はまだ良いんじゃが、例えばアジアなど日本から近いところから輸入すると困ることがあるんじゃが、わかるかのう?



もしかして、船のほうがB/L原本よりも早く到着しちゃうとかですか?
ヨーロッパから日本への船便だと何週間もかかることがあるけれど、アジアだと2~3日ですぐに船が日本に到着しちゃうことがあるから……



その通りじゃ。
揚げ地に船が到着したから輸入者は早く貨物を引き取りたいが、B/L原本がなかなか届かなくて、輸入手続きを進められないという問題が発生することがあるんじゃ。



物自体はあるのに、書類の手続きが進められないんですね。



そこで、B/L原本がなくてもスピーディーに貨物を引き取れるように登場したのが「サレンダーB/L」という方式じゃ。
サレンダーB/Lなら、B/L原本がいらない。
“SURRENDERED”や”TELEX RELEASE”、”ACCOMPLISHED”などのスタンプが押されたB/Lのコピーで貨物が引き取れるということじゃ。



つまり、メールやFAXでB/Lコピーを貰えれば、手続きがスピーディーに進められるってことですね。



そういうことじゃ。
「元地回収」というのは、「積み地(元地)で船社がオリジナルB/Lを回収した」という意味じゃ。
先ほどの、
船に貨物を積んだら、積み地で船社が荷主にB/Lを発行する。
船で貨物を運んでいる間は、貨物は船社のところにある状態。
船が揚げ地に到着したら、荷主は揚げ地の船社にB/Lを持ち込んで、貨物が自分のものだと証明して引き取ることができる。
という流れじゃが、「元地回収」の場合は、①の時点で船社がオリジナルB/Lを回収しているということじゃな。
※サレンダーB/Lはスピーディーで、現在とてもよく用いられる方式です。ただし一部ではサレンダーB/Lの認められない地域があることや、B/Lの有価証券としての機能が失われる点などには注意が必要です。初回の輸出入取引やL/C案件の場合など、B/L原本が必要な取引の場合はOriginal B/Lが選択されます。
WAYBILLとの違い



「オリジナルB/L」と「サレンダーB/L」の違いについては理解できました。
では、「Waybill」とはいったい何なんでしょうか?



「Waybill」は「貨物運送状」と呼ばれるものじゃ。
海上の場合は、SWB (Sea Waybill)、航空の場合は、AWB (Air Waybill)と略されることもある。
これは運送人と荷主の運送契約と貨物受領の証明書で、有価証券としての性質はない他、貨物引き取りの際、提示は不要じゃ。



なるほど!B/Lと違って、有価証券ではないのですね。
提示が不要ということは、スピーディーに手続きができるということでしょうか?



その通り。Waybillは原本不要でスピーディーに手続きが進められる。Waybillもまた、広く使われている方式じゃ。
サレンダーB/Lは日本、韓国、中国など主にアジアの近距離で多く使われておるが、欧州や北米では早くからWaybillが使われておったんじゃ。
WaybillもサレンダーB/Lとスピーディーという点では同じじゃが、未着や紛失の際の保証、細かな手続きといった部分で異なる点もあるので、どちらにするかは積み地や揚げ地の法律や、輸出者・輸入者の進めやすい方法をよく話し合って決めるのが大切じゃ。



サレンダーB/LもWaybillも原本不要という点では同じですが、まったく同じというわけではないんですね。



「Waybill」のB/Lとの違いの大きな点として、B/Lは裏書により譲渡できるのに対して、Waybillは裏書譲渡できないという点にも注意が必要じゃ。



なるほど……Waybillは人にあげることができないんですね。
そのあたりのことも含め、現地とよく相談して決めるようにしようと思います。
*アメリカなどではExpress B/Lと呼ばれることもあります。
・「オリジナルB/L」はB/L原本のこと。有価証券。手続きには原本が必要なため、時間がかかる。初回の輸出入取引やL/C案件の場合など、B/L原本が必要な取引の場合はOriginal B/Lが選択される。
・「サレンダーB/L」は、”SURRENDERED”や”TELEX RELEASE”、”ACCOMPLISHED”などのスタンプが押されたB/Lのコピーで貨物が引き取れる。そのため原本が不要で、メールやFAXなどでスピーディーな手続きが可能。
・「Waybill」は、「貨物運送状」。有価証券の性質はない。原本不要なのでサレンダーB/Lと同じく、スピーディーな手続きが可能だが、裏書譲渡ができない等、細かな違いがある。
・いずれの場合も、輸出者と輸入者でよく話し合い、どの方法が自分たちの取引に合っているかをお互いに確認して決めることが重要。
記事管理No.: 014-01-250228