
東京の会社で貿易のお手伝いをしているウサギさん。
海外から貨物を輸入をすることになりました。
初めての取引相手なので、確認することが多そうです。
「ひとまず」「とりあえず」で貨物を輸出入するのは危険?

実はこの前、海外から日本に貨物を輸入しようと思ったんです。
でも、しっかり打ち合わせる前に、輸出者さんがフライングで貨物を出してしまって……。
気が付いたら、「もう船が到着しちゃった!どうしよう!」という状況で……



それは大変じゃ。輸入は特に輸出よりも時間がかかることが多いんじゃ。
「急ぎだから、ひとまず海外から輸出してしまおう」
「よくわからないけど、日本に到着してからのことは、とりあえず日本に到着してから考えれば良いだろう」……
こういった「ひとまず」「とりあえず」という考えで貨物を送ってしまうことは危険じゃ。
結果、輸入できないというケースも多いんじゃよ。



まさにそうだったんです……日本に到着した後で、実は日本の法律に適合していない貨物だということが判明して、貨物を輸入できなかったんです。



それは災難だったのぉ……。輸入が許可されなければ、当然、日本国内に貨物を入れることはできない。その場合、海外に貨物を送り返すか、貨物を処分しなければならないのじゃ。
※貨物を輸入できずに送り返すことは「積戻し」、処分することは「滅却」と呼びます。



輸送にもすごくお金がかかるのに、貨物を輸入できないなんてショックすぎます……。
なので今回は、絶対に輸入を失敗したくないんです!



こういった失敗を避けるには、貨物を輸出国から出す前に、事前によく調べて、準備や対策をしておくことが重要じゃ。
確認しておくべきこと:貿易条件



でも、何から確認したら良いのかわからない…!



ウサギさん、貿易条件についてはしっかり決めているかのう?



貿易条件?



輸出者と輸入者で、どちらがどこまで輸送を担当するのかを決めることじゃ。これが曖昧だと、後々トラブルになる可能性があるので決めておくのじゃ。



あっ!貿易書類に書いてあるのを見たことがあります。
「Trade Terms」や「Terms」という欄に書いてありますよね?





そのとおり。この「CIF」は「インコタームズ(International Commercial Terms)」と呼ばれるものじゃ。このインコタームズでは、輸出者と輸入者の間の「輸送範囲」が定められていると同時に、「費用負担」や「危険負担」についても定められておる。
「輸送範囲」=「費用負担」=「危険負担」とは限らない点に注意が必要じゃ。
今回の記事についてはわかりやすくするために、費用負担や危険負担ではなく、あくまで「輸送範囲」について焦点を当てて話を進めるぞ。
(※貿易書類について、詳しくはTIPS①の記事参照)
※世界でもっとも利用されている国際貿易取引条件として、「インコタームズ(International Commercial Terms)」があります。このインコタームズでは、「輸送範囲」だけでなく、「費用負担」や「危険負担」についても定められています。紛らわしいのですが、「輸送範囲」=「費用負担」=「危険負担」とは限りません。
一番間違えやすいのはCIF/CFR、および、FOB, FCAとCIP/CPTで、これらは、危険負担(貨物の破損などに対する責任)は、貨物が引き渡された時点で買主に移転します。
ところが、輸送責任は、FOB/FCRは荷物を渡すところまでなのに対して、CIF/CFRとCIP/CPTでは売主が運賃を負担して、航空機・船に積載して相手の国の港まで届けるところまでが輸送区間です。
今回の記事については、わかりやすさを重視し、費用負担や危険負担ではなく、あくまで「輸送範囲」について焦点を当てています。



最新のインコタームズを参考まで紹介するぞ。
1. いかなる輸送手段にも適した規則(コンテナ輸送を含む)
EXW | Ex Works (insert named place of delivery) | 工場渡し(指定引渡地を挿入) |
FCA | Free Carrier (insert named place of delivery) | 運送人渡し(指定引渡地を挿入) |
CPT | Carriage Paid To (insert named place of destination) | 輸送費込み (指定仕向地を挿入) |
CIP | Carriage and Insurance Paid To (insert named place of destination) | 輸送費保険料込み (指定仕向地を挿入) |
DAP | Delivered at Place (insert named place of destination) | 仕向地持込渡し (指定仕向地を挿入) |
DPU | Delivered at Place Unloaded (insert named place of destination) | 荷卸込持込渡し (指定仕向地を挿入) |
DDP | Delivered Duty Paid (insert named place of destination) | 関税込持込渡し (指定仕向地を挿入) |
2. 海上および内陸水路運送のための規則
FAS | Free alongside Ship (insert named port of Shipment) | 船側渡し (指定船積港を挿入) |
FOB | Free on Board (insert named port of shipment) | 本船渡し(指定船積港を挿入) |
CFR | Cost and Freight (insert named port of destination) | 運賃込み (指定仕向港を挿入)) |
CIF | Cost Insurance and Freight (insert named port of destination) | 運賃保険料込み (指定仕向港を挿入) |
参考:インコタームズ2020
引用:https://www.jetro.go.jp/world/qa/J-200309.html#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%BA%EF%BC%88Incoterms%EF%BC%89%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81,%E3%81%A7%E5%88%B6%E5%AE%9A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
輸送範囲を簡単なタイプ別イメージ図で考えてみよう



輸送範囲っていっても、なんだかたくさんあって難しい……



初めから詳しく覚えようとすると大変じゃから、
いくつかのタイプに分けて、簡単なイメージ図で考えてみよう。





なるほど。図にするとイメージしやすくなりました!
わたしは輸入なので、「輸入 国内型」「輸入 国際型Ⅰ」「輸入 国際型Ⅱ」のところを見ればいいんですね?



その通りじゃ。
輸入の3タイプのうち、どのタイプで取引をしたいのか、輸出者とよく話をして事前に取り決めることが重要なんじゃ。



例えば、わたしが輸出者と話し合って、「輸入 国内型」を選んだ場合、わたしは日本に到着した後のことを担当すればいいんですね。





そのとおり。この「輸入 国内型」で考えると、海外や船のことは、輸出者にお任せする感じじゃ。



予想外のトラブルで輸出者とケンカにならないように、前もってしっかり条件を話し合って決めようと思います。



それが良いのう。
・「ひとまず」「とりあえず」で貨物を出すのは危険です。貨物を輸入する現地側のことを事前によく調べ、準備をしっかりしてから貨物を出すようにしましょう。
・準備不足の場合、現地側で貨物が輸入できず、結局貨物を処分しなければならなかったり、輸出国へ返却しなければならなかったりといった事態も起こりえます。
・貿易条件(輸送範囲、費用負担、危険負担)について、輸出者と輸入者でよく話し合いましょう。認識の相違などで後々トラブルになるケースがありますので、お互いの認識を擦り合わせることが重要です。
もっと輸送タイプについて詳しく知りたい方は、物流業者に相談をしましょう。相広物流に連絡すれば親切に相談に乗ってくれます。
(※外部サイトへ移動します。)
記事管理No.: 012-01-250131