
商社で新人貿易事務として奮闘するウサギさん。
少しずつ仕事にも慣れ、お客様の元に届けるため、トラック手配を任されました。
しかし、なんと、まさかのクレーム・・・。
何が問題だったのでしょうか?ベテラン運送業者のクマさんに聞いてみましょう。
同じ「納品」でも中身が全然違う⁉
ウサギさんクマさん、聞いてくださいよ〜!お客さまの会社にトラックで納品したのですが、どっちもクレームになってしまって。



それは大変だったなぁ。どんなクレームだったんだい?



はい、ビルの8階にあるお客様の事務所と、地方の倉庫に納品したんです。事務所のお客様には「1階に置かれて困る」、倉庫の方からは「トラック運転手が荷物を降ろせないって言っている」って……。



なるほど。それは“荷渡し条件”をきちんと決めていなかったのが原因だな。
荷渡し条件とは?



荷渡し条件?



ああ、「どこまで運ぶか」「どういう形で納品するか」を正確に合意するための取り決めだよ。例えば、荷物を乗せたトラックが倉庫に着くだろう?その時、荷物はだれが下す?



運転手さん?ん?倉庫の人?



だろう?どちらが下すかを決めておかないと、トラブルになる。



えー、運転手さんは降ろしてくださらないのですか?



条件次第だ。運転手が下すと、そこに作業が発生する。すると料金も変わるし、作業中に事故があった場合の責任も伴う。



なるほど・・・。いったいどんな条件があるんですか?
よくある荷渡し条件の種類



これらが一般的な取り決めだ。
| 条件名 | 内容 | 費用感 | 注意点 |
| 車上渡し | トラックの荷台上で引き渡し。荷下ろしは荷受人。 | 安価 | 大きな荷物はフォークリフトがないと受け取れない。 |
| 軒先渡し | 建物の入口(倉庫入口の屋根の下など、屋根のある外部)まで運ぶ。 | 標準 | 不在・雨天時に置き配トラブル。 |
| 玄関渡し | 屋内の玄関先(ビルなら、顧客のオフィスの入り口)まで運ぶ。 | やや高め | 通路やエレベーター条件により不可も。 |
| 上階/設置渡し | 室内の指定場所まで搬入・設置。 | 高い(要見積り) | 階段・狭路・管理規約に注意。 |
| 倉庫内指定エリア渡し | 倉庫内の指定区画・ラック前などまで運ぶ。 | 内容により変動 | フォークリフト・ドックレベラーの有無で可否が変わる。 |



同じ荷物でも、条件によって必要な人員や車両が違うんですね。



そうだ。人員や機材がない場合など、最悪納品ができないという事態になることもある。



なるほど、「なんで今日の運転手さんは運んでくれないんだろう?」と思ったこともあったけど、そういうことだったんですね。



その通り。運転手の厚意で手を貸して、万が一の事故があった場合、責任が取れない。料金だけの問題じゃないんだ。
【事例①】ビル納品のリアル:上まで運んでくれない⁉



となると、オフィスビルの8階に届けてくれなかったというのも、そこまでの手配ができていなかった、ということですね。



そうだな。ビル納品は特に注意が必要だよ。
エレベーターの使用制限や搬入口の指定、管理会社のルールなんかで制約が多いんだ。



ほかにはどんなことに注意が必要ですか?



駐車場スペースの確保は絶対だ。例えば、道路わきの小さな倉庫や、オフィスビルなど、近くに有料駐車場がないと、路上駐車となってしまう。最近は警察もトラックの違法駐車は容赦がないからな、待機のために同乗者が必要になることもあるんだ。



そうなると、人件費2倍ですね。それは大きなコストですね。
- 「車上渡し」で契約していたが、顧客は“上階まで”と思い込んでいた
- エレベーターが使えない時間帯で階段手上げ(別料金)
- 管理会社の“作業届”がなくて当日搬入できず
- 駐車スペースがなく納品できなかった。もしくは、待機要員も手配したため、トラック代が高くついた。



ビル納品は“上階渡しできるか”と“管理ルール”を事前に確認しておくことが大切だ。



宅配便のような気持ちで手配してはいけないのですね。



そうだ。宅配便は最初から指定の部屋に届けることを基本としたサービスだ。宅配便は特別に便利だから、それを基準に考えてはダメなんだ。
【事例②】倉庫納品のリアル:設備と条件のズレ



倉庫はビルよりも広いし、納品は簡単ですよね。



いやいや、倉庫の設備や受け入れ体制により、いろいろな配慮が必要だ。
例えば、この図を見て、ウサギさんなら何に気を付けて手配をする?





そうですね、小さな倉庫なので、トラックを停められるかどうか?



いい視点だね。大型トラックを手配したものの、道路が通れなかったとか、駐車スペースがなかったというトラブルは起きうる。それに、トラックは後ろが開くイメージがあると思うが、横が開く「ウィング付き」というトラックもある。



確かに、倉庫に横付けできたら、荷物が取り出しやすいこともありますね。



荷物を降ろすことについてはどうだろう?



あ、床の高さが地面と同じだから、トラックから降ろすときに段差ができる?



その通り。トラックから降ろすには、倉庫側がフォークリフト、荷上げリフト、スロープを用意する必要がある。





そういう設備がない場合はどうしたらいいんでしょうか?



パワーゲート付のトラックを使うという方法がある。



パワーゲート?





トラック後部に装着する荷物積み降ろし用の昇降装置のことだよ。この台に載せれば、段差も楽に降ろすことができる。通常のトラックよりも値段が高いが、荷下ろしは大変な作業だ。人件費、労働環境など考え、適切な手配が必要だ。



私が手配したトラックの運転手さんは、こういう設備がなくて荷物が下せなかったのですね。



場所によっては、通称「ユニック車※」と呼ばれる小型クレーンが乗ったトラックを使うこともある。



ユニック車?



ああ、ユニックとは、「搭載型トラッククレーン」を指す言葉だ。大手の古川ユニック株式会社の登録商標。市場シェアの大きさから、一般名称のように使われているんだ。





あ、工事現場でよく見かけますね!



ああ。ほかにも、トラックの納品とのバッティング、パレットや荷物に巻かれたラップをだれが処理するか?なんてことも決めておかなくてはいけない。処理料金もばかにならないからな。
- パレット積みで到着したが、倉庫側にフォークリフトがなく荷下ろしができなかった
- 周辺の道路が狭く、トラックが入れなかった
- ウィング車(横開き)ではなく、後方リフト車が必要だった
- トラックと倉庫の床高が合わず、荷物が下せなかった。
- 納品時、他のトラックが入っていて待たせてしまった。結果、待ち時間分の追加料金を請求された
- パレットや梱包ゴミを持ち帰ってもらったら、後で追加費用を請求された
倉庫納品で確認すべき5項目
商品の重量、大きさ、数量、形によって適切なトラックが選択されていることを前提とし、下記のようなポイントで確認が必要です。
| 項目 | 確認ポイント | |
| トラックの種類 | ウィング・箱車・平ボディ・リフト・ユニック付きなど | |
| 荷姿 | パレット積みかバラ積みか | |
| 倉庫側の設備 | フォークリフト・昇降リフト・スロープ等の有無 | |
| 荷受け体制 | 荷受け担当の人数・時間帯 | |
| 回収物 | 空パレット・ダンボール・梱包材の処理方法 | |
条件によって料金が変わる理由



条件が変わると、料金もそんなに違ってくるんですか?



全然違う。人が動く分だけコストが上がるし、車両や機材も変わる。運送会社は“人と時間”で成り立っているからな。
- 作業範囲(車上/軒先/上階)
- 人数(1人配送か2人作業か)
- 車両仕様(ウィング・リフトなど)
- 待機時間・時間指定・休日対応
- 回収作業(パレット・梱包資材の持ち帰り)
- 駐車スペース(なければ、有料駐車場か、待機のための同乗者手配が必要)
まとめ:条件は「希望」ではなく「契約」に



これからは、“どこまで運ぶか”“何を使うか”もちゃんと伝えます!



それがいい。「ここまでやってくれるだろう」というのは間違いのもと。条件、「希望」ではなく、「契約」としてはっきり決めておくのが、トラブルを防ぐ一番の近道だよ。
- 荷渡し条件=作業範囲・費用・設備条件を定めるルール
- 現場環境(ビル・倉庫)で“できる範囲”が変わる
- パレット・リフト・回収物も条件に含めて確認
- 「この条件でできる/できない」を事前に共有!
失敗を通じてたくさんの学びを得たウサギさん。次回は慎重に、的確な決定ができそうですね!
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