実際にあった原産地表示の訂正トラブル

ウサギさん博士、聞いてください!



どうしたんじゃ、ウサギさん?



この間、台湾製の雑貨を輸入したんですけど、外箱に「MADE IN ROC」って書かれていて…



ROCか。Republic of Chinaの略じゃのう。でも、一般の人には分かりづらい表記じゃないかのう?



そうなんです!税関の人から、「ROCでは原産国が分かりづらく、誤認の恐れがあります。『MADE IN TAIWAN』に訂正してください」って指摘されてしまって…



なるほど。略称ひとつでも、誤認を招く表示は税関が問題視するんじゃ。



内箱にも全部その表示があったんです。そしたら、その表示を全部わかりやすい表記にしないと、輸入許可にならないと言われてしまったんです。



内箱となると、細かい商品だとかなりの個数になることがありそうじゃのう。誤解しやすい表示が箱に印字してある場合、分かりやすい表記にしたラベルを用意して、上から貼り直さないといけないんじゃないかの?



はい、「MADE IN TAIWAN」という表記のラベルを急遽用意して、「MADE IN ROC」の表示の上に貼りました。
雑貨小物だったので、数万枚のラベルを貼らないといけなくて…倉庫手配や作業員の確保まで考えると、想定外のコストがかかりました。



うーん、それは災難だったのう…。たかが表示一つだと思っていても、こんな風に手続きが止まってしまい、時間やコストがかかってしまうことがあるんじゃよ。
原産地誤認とは?



関税法第71条では、偽った表示や誤認を生じさせる表示のある貨物は輸入してはならないと定められているんじゃ。
ウサギさんの貨物が今回止まってしまった理由もこれじゃ。


法律の概要
原産地を偽った表示等がされている貨物についての規制の概要
原産地を偽った表示又は誤認を生じさせる表示がされている貨物があるときは、税関は輸入を許可せず、輸入申告者に直ちに通知し、期間を指定してその表示を抹消させ、若しくは訂正させ、又はその貨物を積戻しさせることとなっています。
この規定は、虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定の趣旨に即応して設けられたものです。
[参考] 関税法(抜粋)
(原産地を偽つた表示等がされている貨物の輸入)
第71条 原産地について直接若しくは間接に偽つた表示又は誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については、輸入を許可しない。
2 税関長は、前項の外国貨物については、その原産地について偽つた表示又は誤認を生じさせる表示がある旨を輸入申告をした者に、直ちに通知し、期間を指定して、その者の選択により、その表示を消させ、若しくは訂正させ、又は当該貨物を積みもどさせなければならない。
引用:税関ホームページ「原産地を偽った表示等」よりhttps://www.customs.go.jp/zeikan/seido/origin/index.htm



原産地を偽る or 紛らわしい表示がある貨物は輸入禁止。
訂正・抹消・積戻しの対応が必要ということじゃ。
原産地表示の基本
「原産地」とは、その貨物が実際に生産・製造された国や地域を指します。
複数の国で加工・組立が行われる場合は、最も重要な加工が行われた国が原産地とされます。
また、食品や衣類などは「食品表示法」「家庭用品品質表示法」など、別の法令で原産地表示を義務づけられている場合があります。
その場合も、関税法上の考え方に反しない限り、適正に表示されていれば問題ありません。



“MADE IN ROC”のように、略称だけで原産国が分かりづらい表示は“誤認表示”になることがあるんじゃ。
他にも、次のようなケースには要注意じゃ。
どんな表示が違反になるか(具体例)
「Made in Japan」と書いてあるのに実際は日本以外の国が原産国――これが偽った表示。
また、略称やデザインなどで見る人が誤解するおそれがあるものは誤認表示とされます。
要注意のケース
- 原産地以外の国名・都市名の表記
- 外国の国旗やブランド名で誤解を招く場合
- 特定地域の伝統名を無断使用する場合(例:外国製の「大島紬」「有田焼」)
一方で、次のようなケースは違反とはみなされません。
- 「Tokyo Style」「Fashion in Paris」など、流行やデザイン拠点を示す表現
- 風景写真や観光地名などが単にデザインとして使われている場合



偽った表示はもちろんダメだけど、紛らわしい表示にも注意しないといけなんですね。



そういうことじゃ。



いっそ原産地は無表示でもいいんですか?表示しないほうが安全な気がしてしまいます。



確かに、それも一つの手じゃの。通常の輸入手続きの場合、原産地表示は義務ではないんじゃ。紛らわしい表示をするぐらいなら、表示がないほうが良い場合もある。※
じゃが、税関の手続き上はそれで問題ないかもしれんが、消費者や取引先が“どこの国の製品か分からない”と不安に思う可能性がある。
だから、正確な原産地表示をしておくほうが安心なケースもあるぞ。
※ラベルやケースマークに原産地を無表示の場合でも、商品そのものに紛らわしい記載があると、税関から原産地表示を求められるケースもあります。
例として、「USA」という文字がデザインされた中国製Tシャツを輸入したところ、原産地誤認の恐れがあるため、税関から「MADE IN CHINA」の表示をするように求められた事例があります。
表記について心配な場合は、事前に税関に相談するのが良いでしょう。
実務上の注意点(予防策)



誤認表示があると、税関は輸入を許可しない。
輸入前ーーつまり輸出国で商品出荷前に、ラベル・外装・内装・商品本体のチェックが欠かせないのじゃ。
今回のようなことが起こらないよう、次のポイントを押さえておくと良いぞ。
- 紛らわしい略称や表現(例:ROC、PRC)は避ける
- 表示内容に不安があれば、事前に税関へ相談
- 他法令による表示義務がある場合は、そのルールも確認
- 表示義務がない場合でも、正確な表示をしておくと信頼性向上・トラブル回避につながる



次からは輸出者さんとも協力して、しっかり表記をチェックしてから輸入しようと思います!
原産地表示は「虚偽」だけでなく「誤解されやすい表現」もNGです。
誤認表示があると輸入が止まり、訂正や貼り直しに大きなコストがかかり、場合によっては積戻しなど、輸入ができないこともあります。
原産地を表示しないのは原則OKですが、他法令貨物やEPAの利用、商品自体が原産地誤認の恐れがあるデザインの場合など、商品の種類や手続き内容によっては必要なこともありますので、事前によく調べて適切な方法を検討しましょう。また、正確な原産地を書いておくほうが、取引先や消費者の信頼性が高まることもあります。
出荷前にラベル・外装・内装・商品本体などを必ず確認し、表記に不安がある場合は、必要に応じて税関へ事前相談しましょう。
記事管理No.: 031-01-251115








