輸入事業を始めたばかりなどで、資金繰りが厳しい中小企業は少なくありません。輸入した品物を売って、売ったお金で支払いをようやく済ませるような状態も、起業初期には珍しくないことです。
そんな中小企業の頭を悩ませるのが、関税・消費税等(※)の支払いではないでしょうか?
関税・消費税等は物流費の中でも高額になりやすく、しかも早めに支払わなければならないので、中小企業の荷主の資金繰りを苦しめる要因の一つになっています。
この記事では現在主流となっている関税・消費税等の支払い方法をわかりやすく解説し、関税・消費税等の支払いにクレジットカード決済を使うことで支払いに猶予を持たせる方法を紹介します。
クレジットカード決済で支払いに猶予を持たせることで、その間に輸入した品物を売り、余裕を持って関税・消費税等の支払いに充てることができるようになるでしょう。
※関税:「税関において徴収している関税・消費税等(輸入貨物に係る関税及び消費税等の内国消費税※(地方消費税を含む。)並びにとん税及び特別とん税をいう。)
※「内国消費税」とは、消費税法等の規定により課される消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税または石油石炭税をいいます(輸徴法2条1項1号)。」
主な関税・消費税等の支払い方法
輸入した品物を速やかに荷主のもとへ届けるため、輸入手続きにはスピーディーな動きが求められます。
しかし、関税・消費税等を支払わないと輸入許可が下りないため、すぐに関税・消費税等を支払う方法として、現在は下記の3種類の支払い方法が用いられています。
- 物流会社・通関業者による立替
- 荷主リアルタイム口座振替(ダイレクト方式)
- 延納(納期限延長)
これらの関税の支払い方法について、ひとつずつ見ていきましょう。
物流会社・通関業者による立替
まずは物流会社・通関業者による立替です。
素早く輸入許可を得るため、物流会社・通関業者が関税・消費税等を立替えて迅速に輸入許可を得ることがこれまで慣習化していました。

しかし、物流会社・通関業者にとっても関税・消費税等の立替は利益がない上に高額であることが多いため、歓迎できるものではありません。
実荷主は物流会社や通関業者に関税・消費税等を立替えてもらっても支払いを催促される場合や、そもそも立替不可として断られたりしてしまうケースも少なくなく、資金繰りが楽にならないことも多くあります。
物流会社・通関業者にとってメリットがなく、実荷主にとっても負担となるケースが少なくないため、現在では立替は「悪しき慣習」として物流業界全体でなくす動きも出てきています。
荷主リアルタイム口座振替(ダイレクト方式)
立替に代わって広まってきているのが荷主リアルタイム口座振替(ダイレクト方式)です。
これは輸入許可と同時に、関税・消費税等が実荷主の口座からダイレクトに引き落とされる仕組みです。当然口座には関税を支払えるだけの残高があることが前提となります。
万が一口座金額が残高不足になると輸入許可が保留になり、輸入手続きが滞ってしまうので、実荷主は口座管理をしなければなりません。
資金に余裕がない中小企業の資金繰りには向かない方法です。
延納(納期限延長)
その他の関税・消費税等の支払い方法としては、延納(納期限延長)があります。
これは税関に担保を提出することにより、3か月以内で納期限延長ができる仕組みです。
資金繰りには余裕が生まれますが、関税額相当の担保が必要になる点に注意が必要です。
関税額相当の担保を用意することが難しい起業初期の中小企業には、こちらもあまり向かない方法でしょう。
輸入関税・消費税等の支払いにクレジットカード決済が可能
関税・消費税等の支払いは本来は銀行振込ですが、これをクレジットカード決済にし、支払いまで最長60日の猶予を持たせることができるサービスがあります。
それが「支払いドットコム」です。
支払いドットコムはクレディセゾンとUPSIDERが共同運営するサービスで、請求書払いをカード支払いにすることができます。

関税・消費税等の支払いをクレジットカードで決済することで、資金繰りに余裕が生まれます。
なお、支払いドットコムを使うことができるクレジットカードとして、「セゾンプラチナビジネス」が挙げられます。
ビジネス上の支払いをカード払いに集約することで、取り扱う口座が一元化できるメリットがあります。複数の口座を管理する手間が大幅に省略され、経理作業もわかりやすく「見える化」されるでしょう。
支払いドットコムと従来の関税・消費税等の支払い方法を比較
支払いドットコムを利用した関税・消費税等の支払いと、従来の支払い方法はどのような違いがあるのでしょうか?
特徴やメリット・デメリットをまとめてみました。
支払いドットコム | 物流会社・通関業者による立替 | 荷主リアルタイム口座振替(ダイレクト方式) | 延納(納期限延長) | |
---|---|---|---|---|
特徴 | 請求書払い(銀行振込)の支払いをクレジットカード決済にできる。 | 物流会社・通関業者が関税・消費税等を立替える。 | 輸入貨物の税関審査終了と同時に、実荷主の銀行口座から関税がダイレクトに引き落とされる。 | 税関に担保を提供し、関税・消費税等の納付を猶予してもらう制度。猶予後は、納付書に記載された金額をインターネットバンキング(Pay-easy)または銀行・郵便局の窓口で納付。 |
初期手続き | 必要なのはクレジットカードのみ。 | 事前に支払いドットコムの登録をすれば、書類提出、審査、面談は不要。事前に物流会社・通関業者に確認し、関税・消費税等の支払い方法について相談が必要。 | 事前に銀行口座の準備と、NACCS(輸出入・港湾情報処理センター)に登録手続きが必要だが、一度登録すればその後の更新手続きは基本的には不要。 | 事前に担保が必要で、税関への手続きも必要。延納方式も個別延長なのか一括延長なのか等で異なり、個別の場合は申告ごとに手続きが必要。 |
資金繰り | 期限の迫った請求書も、支払いまで最長60日余裕をプラス。 | 本来実荷主が支払うべき金額を物流会社・通関業者が善意・利便性の観点から立替えているだけなので、早めの支払いが必要。 | 実荷主の口座から許可と同時に関税額が引き落とされてしまう。 | 3か月以内で納期限延長をできる(延納の種類にもよる)。 |
手数料など | 「支払いドットコム」のサービス手数料4%がかかる。 | 銀行の振込手数料などがかかる。 | 手数料は不要。 | 手数料はかからないが、担保が必要。 |
その他注意事項など | 一部のカードが使用できないので注意。 | 物流会社・通関業者による関税立替は、業界全体の動きとしては、今後なくしていく方法で考えられている。 | 口座の残高管理が必要。 | 個別延納は、輸入の都度手続きが必要。担保には不動産・株式などがあるが、評価と登録に時間がかかってしまう。 |
このように、支払いドットコムは事前手続きは必要なものの、書類提出、審査、面談は不要で、誰でも利用できます。支払い手数料が4%かかるものの、他の支払い方法と比べて支払い期限に猶予を持たせられるのは大きなメリットでしょう。
資金繰りの面では、支払いドットコムの利用が他の支払い方法と比べて秀でています。
まとめ:支払いドットコムの利用で資金繰りが楽になる
関税・消費税等の支払いは急がねばならず、実荷主・物流会社・通関業者にとってこれまで大きなネックとなっていました。
しかし、支払いドットコムに加入している物流会社を利用すれば、相手には銀行振込で支払う形を取りながら、こちらはクレジットカード決済で実際の支払いまで猶予を作ることができます。
つまり素早く輸入手続きを終え、実際の支払いまでに商品を売って関税支払いのための資金を用意するという戦略が取れるのです。
輸入事業を始めたばかりで資金繰りが厳しい中小企業などにとって、このサービスの利用にはキャッシュフローの改善という大きなメリットがあるでしょう。
支払いドットコムは、関税・消費税等の支払い以外のお支払いにも使えます。輸送費など他の費用も支払いドットコムを活用することによって、さらに資金繰りは楽になることでしょう。