記事No.: 006-01-241031
皆さんは、FCLやLCLという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
輸出入や物流に携わる方なら、毎日のように耳にする貿易用語です。 海上輸送を考える上で、必要となる基礎知識なので、しっかり学んで理解しましょう。
FCLとLCLとは?
FCL(エフシーエル)とLCL(エルシーエル)って何だろう?

輸出入業務をやっているとよく聞く言葉だけど、なんだかよく分からない……
FCLは「Full Container Load」の略、
LCLは「Less than Container Load」の略のことです。



これらはいずれも、海上輸送のコンテナ船での輸送形態を指す言葉じゃ。
ざっくり言うと、
FCLは「コンテナ1本を、一人の荷主がまるまる借りている形態」。LCLは「コンテナ1本を、何人かの荷主が借りている形態」のことじゃ。



例えば車一台を輸送する場合なんかは、コンテナ1本をまるごと借りたほうがいい気がするので、LCLよりもFCLのほうがいいんでしょうか?



基本的にはその考え方で大丈夫じゃ。
もちろん、「この貨物だから絶対この方法がいい」と言い切れないので、ケースバイケースで最適な方法を検討することは必要じゃ。
ここでは詳しく触れないが、車なんかはコンテナ船ではなくRO-RO船(自動車専用船など)も候補の一つ。



逆に、小さな商品を段ボール一箱分だけ輸出したい、なんて場合は、コンテナのスペースが余ってしまうから、LCLを選んだほうがお得なのかな?



小さな商品を段ボール一箱分……貿易においては、「1カートン分」と呼ぶの。1カートンだけでFCLを選ぶ荷主はさすがに少ないのじゃが、潰れが怖い場合は少ない貨物でもあえてFCLを選ぶケースもある。急ぎならAIR輸送という選択肢もあるぞ。小さい貨物を1カートンだけ輸送する場合は、LCLとAIRで料金比較をしてみるのも手じゃ。
FCLとLCLの違い
FCLとLCLって、具体的に何が違う?
FCLとLCLの違いとしては、主に、
① 費用
② 時間
③ ダメージの出やすさ が挙げられます。



FCLとLCLの違い……まだぼんやりとしかイメージできません。



以下で一つずつ見ていくとしよう。
①費用



物流にかかる「費用」にもさまざまなものがあるので、ここではシンプルに「海上運賃」について考えることにしよう。



FCLはコンテナ1本まるごと貸し切り。
LCLはコンテナ内のスペースをみんなでシェア。
そう考えると、海上運賃が高いのはFCL?



物量などにもよるので一概には言えんのじゃが、単純比較としては、その認識で大丈夫じゃ。
海上運賃について比較する場合、一般的に、海上運賃が高くなるのはFCLじゃ。
海上運賃は、FCL・LCLともに、船会社(NVOCC)・シーズン・仕出し地・向け地など、さまざまな要因によって金額が左右される。



そうすると、FCLとLCLの海上運賃の大きな違いはどこで出るんだろう?



FCLとLCLの海上運賃の大きな違いは、その計算方法にあるのう。
FCLは主に「コンテナの種類・サイズ・本数」によって金額が計算されるのじゃ。
コンテナの種類には、雑貨などを扱うドライコンテナ、冷凍冷蔵品を扱うリーファーコンテナなどがあり、サイズは主に20F(20フィート)と40F(40フィート)があるぞ。



LCLはどうやって海上運賃が計算されるんですか?



LCLの海上運賃は、「レベニュートン(Revenue Ton (R/T))」によって金額が計算される点が、FCLとは異なる。
レベニュートンは、「容積(M3)と実重量(Actual Weight)を比較して、どちらか大きいほう」のことじゃ。
貨物の容積と実重量のどちらか大きいほうを基準に、LCLの運賃は計算されるんじゃ。
また、レベニュートンを考える際には、「ミニマム(Minimum, M/M)」にも注意が必要じゃぞ。たいていの場合、1R/Tが最小単位じゃ。「ミニマム1R/T」の場合、1 R/T未満は1 R/Tとして計算されるんじゃ。
②時間



FCLとLCLでは、かかる時間も違うの?



手続きや作業の流れが異なるので、それぞれかかる時間も異なってくるんじゃ。
一般的に、輸出の場合、LCLはFCLよりもCUT日(通関などの手続きをクリアし、貨物を受け付ける締め切り日のこと)が早い。
輸入の場合、LCLはFCLよりも、搬入情報が揚がる(通常の通関などの手続きに入れる状態になる)のが遅いんじゃ。



日本から出ていく時は、FCLのほうが締め切りは後まで待ってくれて、日本に入ってくる時は、FCLのほうが早く手続きに入れるんですね。
……なんだか、FCLのほうが優遇されています?



優遇というより、LCLはFCLよりも港での手間かかっているので、そのぶん時間がかかってしまうのじゃ。
FCLは、船に積む前や船から下ろした後に、CY(シーワイ。コンテナヤード。コンテナの蔵置場)にコンテナを直接集めるのじゃが、LCLは、CYだけでなく、CFS(シーエフエス。コンテナフレートステーション。コンテナに積まれていない貨物を集める場所)を経由する必要があるんじゃ。



CYとCFS……また新しい用語が!
つまり、FCLはCYだけを経由すれば良いけれど、LCLはCYとCFSの両方を経由しているので、時間がかかるということですか?



そういうことじゃ。
FCLはコンテナ1本が一荷主のものなので、コンテナごと手続きができるのである意味シンプルじゃ。輸出の場合は、コンテナをそのまま船に載せれば良いし、輸入の場合も、コンテナをまるごと輸送すれば良い。
一方、LCLは複数の荷主の貨物をコンテナ1本に詰めるので、ひと手間かかるんじゃ。輸出なら、それぞれの荷主から貨物を集めて、集まってから、それを1本のコンテナに詰めなければならない。輸入なら、到着した1本のコンテナを開けて、中の貨物を取り出し、どの貨物がどの荷主のものか特定しなければならないのじゃ。こういった作業を行うのが、CFSなんじゃ。



なるほど!CFSでは荷主ごとにばらばらの状態のLCL貨物を扱うんですね。LCL貨物もコンテナ船に積まれている時は、ばらばらの状態ではなく、コンテナに貨物が詰められた状態でないといけませんものね。
③ダメージの出やすさ



FCLとLCLで、貨物のダメージの出やすさも違うの?
FCL貨物もLCL貨物も、どちらも海上輸送中はコンテナに詰められた状態なんですよね?



そうなんじゃが、一般的に、LCLのほうが貨物ダメージは出やすいと言われておる。
FCLはコンテナをまるごと貸し切りじゃが、LCLは他の荷主の貨物と混載なので、自分の貨物以外にどんな貨物が合積みされるか、また、自分の貨物がコンテナのどの位置にどんな風に積まれるのか、荷主には全く分からないんじゃ。



輸送中は、船が揺れたりするので、貨物のダメージ対策が重要だと聞いたことがあります。でも、どんな貨物が合積みされるのか分からないと、貨物のダメージ対策も取りづらいですね。



そうなんじゃ。
FCLならコンテナ1本を貸し切りなので、コンテナの中にどんな風に貨物を積むか、荷主が自分である程度コントロールできる。自分の貨物を熟知した荷主が、自分で貨物を積みつければ、安全性も高くなる。
逆に、LCLは、どんな貨物が一緒に混載されるか、荷主には分からない。自分以外にどんなお客さんが、どんな貨物を積んでくるかは、荷主自身には分からないのじゃ。
だからLCLの場合は特に、貨物の梱包などをしっかりとして、自分の貨物がダメージを受けないように保護しないといけないのじゃ。
FCLとLCLにはさまざまな違いがあることが分かりました。
これらの違いを理解し、自分の貨物に最適な輸送方法を選ぶことがとても重要ですね。