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イラン情勢で物流はどう変わる?(後編)|止まった輸送を、誰がどう立て直したのか

前編では、イラン情勢の影響により、航路停止や代替輸送の増加、コスト・納期への影響が発生している背景を整理してきました。 では、その状況に対して船会社はどのような判断を行い、どのように現場で実行しているのでしょうか。今回の対面インタビューでは、現場で実際に行われていた具体的な対応について話を伺うことができました。

目次

第2章:中東向け貨物をどう動かしたのか ― 代替ルートと現場対応の実態 ―

ウサギさん

すでに出荷されていた貨物も大変でしたが、これから出す貨物についても新しい対応が必要ですね。現時点で、中東向け貨物は出せるのでしょうか?

フクロウ博士

完全に止まったわけではない。現場では、何とか輸送を維持するための対応が続けられておる。

ホルムズ海峡周辺の不安定化により、従来の航路が使えなくなったことで、現場では代替ルートの構築が進められている。

具体的には、

  • UAEのKhor Fakkan(ホール・ファカン)
  • Fujairah(フジャイラ)
  • オマーンのSohar(ソハール)

など、ホルムズ海峡外側の港まで幹線船で輸送し、そこからフィーダー船や内陸トラック輸送を組み合わせて最終目的地まで届ける方法が取られている。

当初はKhor Fakkan港を中継地点としていたが、急激な貨物集中によりヤードが逼迫。その後はFujairahを起点とした運用へ切り替えられていったという。

しかし、現地でも、

  • フィーダー船不足
  • トラック不足
  • 港湾混雑

などが発生しており、決して安定した状況ではない。

そのため、UAEやオマーンの現地支店担当者と密に連携を取りながら、コンテナを1本ずつ届けるような対応が続けられている。

今回の取材で特に印象的だったのは「マニュアルでは想定していないほどの有事であった」という点です。

今回の事態は、イランイラク戦争以来とも言われる規模で海上物流へ影響を与えたものであり、世界中の船会社や物流関係者にとっても、想定を超える事態であった。

つまり現場では、既存マニュアルをなぞるのではなく、

  • 本社
  • 各国支店
  • 現地代理店

がリアルタイムで連携しながら、その場その場で対応を組み立てていく必要があった。

共有されていた方針は、一貫して「サービスを止めない」という強い意志であった。

さらに、現場担当者は、

  • 知人
  • 取引先
  • 同じビルで会った中東出身者

などへ「現地で影響力を持つ人物で立場が上の人を誰か知らないだろうか?」と積極的に声をかけて、紹介してもらった方との、コンテナ受入れ交渉を進めるということまでやっていたという。

実際に、そのルートを通じて受入れが実現したケースもあったとのことであった。

ウサギさん

マニュアル通りではなく、現場で本当に“何とかつないでいた”んですね…。

フクロウ博士

そうじゃ。有事では、最後は現場の判断と実行力が問われるんじゃな。

第3章:今後の見通しと、物流コストへの影響

ウサギさん

こうした対応で、今後は安定していくのでしょうか?

フクロウ博士

そこが難しいところじゃ。今は“動かしながら考えている”状態とも言える。

現在、中東向けブッキングについては、LG(Letter of Guarantee)の提出を前提に受付が再開されているという。

ただし、

  • 高額な輸送費
  • 不透明な納期
  • 船会社都合を含むLG条件

など、荷主側の負担は大きい。

この情報を聞きつけた新規フォワーダーなどから問い合わせも来ているというが、費用、スケジュール、契約条件などのハードルも高く、成約は限定的とはいえる。

また、今回の紛争は中東向けだけでなく、アジア・太平洋方面の近海サービスにも影響を与えている。

サービス自体は継続できているものの、燃料サーチャージ上昇は避けられず、急激なコスト増によって、すでに決まっていた注文がキャンセルされるケースも発生しているという。

担当者からは、「もしこの状況が長引けば、現在のような“迂回前提”の輸送形態そのものが定着していく可能性もある」という話も出ていた。

実際、最近パナマ運河とスエズ運河という海上輸送の動脈が滞る事例が発生して海上輸送に大きな影響を与えることが発生している

  • 2021年にEvergreenの大型コンテナ船がスエズ運河で座礁して1~2週間ほど運河通航が出来なくなったり制約を受けたこと
  • 2023-2024年にパナマでの天候不良による水不足で運河の水位調整ができずパナマ運河で通航制限が続いたこと
  • 2023年以来の紅海危機で、フーシ派の海賊攻撃によりスエズ運河を通行する欧州向け船舶がアフリカ南端の喜望峰経由へ迂回せざるを得なくなったこと

など、大規模な地政学リスクや天候の影響によって、世界の物流ネットワークに大きな影響を与えてきたという歴史がある。

今回も、

  • Fujairahなどホルムズ海峡外側の港をハブとして使う運用
  • フィーダー船や陸送を前提とした多段輸送
  • “直行”ではなく“分散・迂回”を前提とした設計

が広がり始めている。

つまり今回の紛争は、一時的な混乱というより、

👉 「物流ネットワークそのものの形を変え始めている」

歴史的な転換点となる可能性もある。

ウサギさん

現場のドラマを知ることができたおかげで、荷主としても注意すべき点が見えてきました。普段当たり前のように届いている貨物の裏で、こんな判断と調整が行われているんですね。

フクロウ博士

その通りじゃ。今回のような有事では、既存の輸送計画だけでは対応できん。現場では、状況に応じてルートやオペレーションを組み替えながら、物流を維持する対応が続けられておるんじゃ。

編集後記

本インタビューにご協力いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。

今回の取材を通じて見えてきたのは、国際物流とは単なる輸送網ではなく、状況に応じて再設計され、現場の判断と実行によって支えられている“生きたネットワーク”であるということでした。

コクブモ編集部では、今後もこうした現場取材を通じて、国際物流の最前線で何が起きているのか、そして現場ではどのような工夫と努力が行われているのかを、引き続き深掘りして発信してまいります。

記事管理No.: 038-01-260522

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