いつも「国際物流の森」、通称「コクブモ」をお読みいただき、誠にありがとうございます。
コクブモ編集部では、昨今のイラン情勢が物流に与える影響について、船会社20社ほどに取材を行いました。
ニュースでは連日のように報じられているものの、日本にいる私たちにとっては、どこか遠い出来事に感じてしまいがちです。
しかし、現場で話を聞く中で見えてきたのは、すでに物流の現場では変化が起きているという事実でした。
この内容を、「自分には関係ない話」としてではなく、これからの輸送を考える上での“自分ごと”として感じていただきたい。 そんな思いから、今回はいつもの動物たちに登場してもらい、親しみやすい形で、現場の声をお伝えしていきます。
ウサギさんフクロウ博士、ニュースでイラン情勢ってよく見ますけど、物流には関係あるんですか?
私の扱う商品は中東向けじゃないので、正直あまり関係ない気がしていて…。



うむ…そう思うのも無理はない。しかし、その認識こそが“落とし穴”なんじゃ。


船会社が語る「航路変更・寄港中止」のリアル



今回の件について、わしも複数の船会社に話を聞いてみたんじゃがな、どの現場でも共通していたのは、“すでに影響が出ている”という点じゃった。
今回の取材では、複数の船会社から共通して、すでに運航やサービスに影響が出ているという回答がありました。
具体的には――
- ドバイ(Jebel Ali)など主要港の寄港中止
- 中東向け貨物のブッキング停止・制限
- 代替港(Khor Fakkan(アラブ首長国連邦)など)での対応
- 航路変更や寄港地の見直し
また、安全確保の観点から、ホルムズ海峡周辺への航行そのものを制限する動きも見られます。
ある船会社からは、
「中東向け貨物の取扱いを一時的に完全停止した」という声もありました。
一方で、別の船会社では代替港を使った輸送を再開しているものの、「状況によっては貨物の揚げ地が急に変更されるリスクがある」といった、不安定な運用が続いていることもわかっています。



ひとつ――中東だけの話ではないと認識することも重要じゃ。
海運というのは、世界中がひとつのネットワークでつながっておる。一部の航路が止まる、あるいは変わると、その影響は別の航路、別の地域へと波のように広がっていくんじゃ。



“運べない”とか、“ルートが変わる”って、もう起きてるんですね…。



うむ。日本にいると対岸の火事のようじゃが、実際の影響は存在するのじゃ。
荷主に起きる3つの変化



では、日本に住む我々にとって、どんな影響があるのか、荷主としての心得を説明しよう。
船会社からは、「航路変更や安全措置により、所要日数が延びるケースがある」
という声が複数挙がっています。
特に中東関連では遅延が顕著な中、影響を最小限に抑えるために世界中で航路の調整を行っていますが、不確実性が高まっているのが現状です。
具体例として、
・中東向け貨物が行き場を失い、トランシップ港で滞留(上海・香港・釜山など)
・ターミナルのスペース不足によるオペレーション遅延
・コンテナの需給バランスの乱れ
・スペース逼迫によるブッキング難化
などの影響が生まれています。
👉 リードタイムは“読みにくくなっている”
今回の取材で特徴的だったのが、このポイントです。
・紛争前に出荷された貨物の積戻し
・本来の揚げ地とは異なる場所での荷卸し
・それに伴う通関や手配のやり直し
実際に、「積戻しとなった貨物について、日本側での通関手配や追加コストに注意が必要」といった指摘もありました。
👉 「予定通りに届く前提」が崩れ始めている
すべての船会社に共通していたのが、燃料価格上昇によるコストへの影響です。
・Emergency Bunker Surcharge(EBS)の導入
・燃料サーチャージの引き上げ
・区間によっては運賃そのものの見直し
これらは中東関連の貨物だけがかかわることではありません。
さらに、ある船会社からは「既存契約であっても、緊急的に値上げとなる可能性がある」というコメントもありました。
👉 コスト上昇は“これから”ではなく、すでに始まっている
今後はどうなる?
今後の見通しについても、各船社から意見が分かれつつも、いくつか共通するポイントが見えてきました。
・停戦の可能性はあるが、情勢は非常に流動的
・仮に終戦しても、安全が確認されるまではすぐにサービス再開とはならない
・影響は最短でも2〜3ヶ月程度続く可能性
一方で、「停戦となれば比較的早期に正常化する可能性もある」という見方もあり、
👉 先行きは不透明であり、状況次第
というのが実態です。
まとめ(荷主の皆様へ)
今回の取材から見えてきたのは、「気づかないうちに影響を受けるリスクがある」という点です。
その前提で、実務上の注意点は以下の通りです。
□
この取材には下記船会社様にご協力いただきました。
- 納期は「通常+α」で設計する → 想定通りに運ばれない前提で、余裕を持ったスケジュールにする
- 運賃は「変動するもの」として見積もる → 燃料サーチャージや緊急値上げの可能性を織り込む
- 中東以外の貨物でも安心しない → トランシップやコンテナ需給の影響で、他航路にも波及する可能性あり
- 出荷前・ブッキング前に最新状況を確認する → 航路変更・寄港中止・スペース状況は日々変化
👉 「いつも通り運べる」という前提で動かないことが、最大のリスク回避になります。
この取材には、17社にアンケートをお願いし、下記を含む4社からご回答をいただきました。ほかには、会社としては回答できないが、担当者の感想として回答をいただいた方もいらっしゃいました。
TS LINES様、CNC JAPAN様、OOCL様、南星海運ジャパン株式会社(NAMSUNG) -様 ほか
みなさま協力いただきありがとう ございました。
なお、事前にお伺いした質問の内容は下記のとおりです。
【1.大枠として】
Q1-1 現在のイラン情勢は、御社の航路や運航に影響していますか?
Q1-2 影響がある場合、どのエリア・航路で顕著ですか?
Q1-3 具体的にはどのような対応を取っていますか?(減便・回避・寄港変更など)
【2.具体的な影響】Q2-1 スケジュール遅延やリードタイムへの影響は出ていますか?
Q2-2 荷主側として注意すべき点はありますか?荷主の皆様にお知らせしたいことはありますか?
Q2-3ブッキングやスペース確保に変化はありますか?
Q2-4 運賃やサーチャージに影響は出ていますか?
【3. 今後の予測】
Q3-1 日本の輸出入ですと、中東地域・ヨーロッパ地域との航路に影響があると推測されますが、ほかの地域も影響を受けることが考えられるでしょうか?Q3-2 難しいとは思いますが、今後の予測をお聞かせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回のように、一見すると難しそうな政治や世界情勢の話題も、物流の現場、ビジネスに影響を与えています。
コクブモ編集部では、こうした変化をタイムリーに、わかりやすくお伝えし、皆様の安全で確実な物流の一助となる情報発信を続けてまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
記事管理No.: 038-01-260430








