
商社で貿易事務をしているウサギさん。
「危険品」と言われて渡された貨物が、何の変哲もないヘアスプレー。危険品って爆発物や毒のことではなかったの?
今回は、「危険品」について知るシリーズ第1回目です。
ウサギさん博士、今日はちょっと相談したいことがあるんです。



ほう、どうしたんじゃ?



先日、上司から「これ危険品だから気をつけて」って輸出案件を渡されたんですけど……
品物を見たら、ただのヘアスプレーだったんです。



なるほど。ヘアスプレーは確かに注意が必要な商品じゃ



そうなんですか?
正直、危険品って爆発物とか毒みたいな、特別なもののイメージしかなくて……。ヘアスプレーって、危険品なんですか?



ふむ、良い質問じゃな。たしかに「危険品」と聞くと、爆弾や猛毒を想像する人は多い。じゃが実際には、ヘアスプレーのような日用品も、輸送の世界では立派な「危険品」として扱われることがあるんじゃよ。


意外と身近な危険品



例えば、以下のような品物は、「危険品」として扱われる可能性があるので注意が必要じゃ。
主な危険品の例
①リチウムイオン電池を内蔵した製品
一見ただの電子機器ですが、リチウムイオン電池の発熱・発火リスクから危険品(Class 9)として扱われることがあります。
- モバイルバッテリー
- ノートPC
- 電動工具
- 電動キックボード
- ドローン
②香水
アルコールを多く含むため引火性液体(Class 3)として危険品に分類される場合があります。
③スプレー缶
圧縮ガスや液化ガスを含むため、危険品として扱われる場合があります。
- 制汗剤
- ヘアスプレー
- 潤滑剤スプレー
④マニキュアや除光液
有機溶剤を含むため、引火性液体(Class 3)として危険品に分類される場合があります。
⑤塗料・インク
溶剤を含むため、引火性液体(Class 3)として危険品に分類される場合があります。
- ペンキ
- 一部の印刷インク
⑥ドライアイス
冷却材としてよく使われますが、昇華して二酸化炭素ガスを発生させるため、危険品(UN1845)として扱われます。
⑦炭(木炭・バーベキュー用炭)
自然発火のおそれがあり、品種や状態によっては危険品に分類される場合があります。
⑧救急箱や化学実験キット
アルコール、酸、酸化剤などを含む場合、危険品として扱われることがあります。
⑨エンジンや機械
燃料やオイルが残留している場合、危険品として扱われることがあります。



危険品って、こんなに身近なものなんですね……。



そうじゃ。そういえば以前、キツネくんも香水を送ろうとして苦労していたことがあったのう……。
(詳しくは「香水の危険な香り キツネくん、恋と物流大成功への道」参照。)



キツネくんも苦労していたんですね……。



危険品でどうしたら良いか分からないと悩む人も多いようじゃから、今回は危険品についてより詳しく理解できるように、複数回に分けて話そうかの。
そもそも危険品とは?海と空でルールが違う?



博士、「危険品」って、作業する人にとって危険だから「危険品」と呼ばれているんですか?



半分正解じゃ。もちろん人への危険もあるが、それだけではない。船や飛行機、ほかの貨物、さらには環境への影響も考慮して危険品は定められておるんじゃ。
危険品とは、輸送中に人命、輸送機関、他の貨物、または環境に危険を及ぼすおそれがあるとして、国際ルールで分類・規制されている物質や物品を指すんじゃの。



具体的には、どんな危険性のことですか?



輸送中に火災・爆発・腐食・中毒などを引き起こす可能性がある物質や製品のことを指す。
だからこそ、ただ箱に詰めて送るのではなく、国際的なルールに従って分類し、書類を整え、適切な梱包と表示をする必要があるんじゃ。
危険品(Dangerous Goods)
輸送中に人命、輸送機関、他の貨物、または環境に危険を及ぼすおそれがあるとして、国際ルールで分類・規制されている物質や物品。
危険の種類としては、火災・爆発・腐食・中毒などがある。



それから、「危険品」といっても、輸送手段ごとにルールが異なるのじゃ。



えっ!船か飛行機かで異なるということですか?



うむ。国連が策定した危険品輸送に関する国際的な基本指針があってな、それをベースに、輸送手段ごとに専門の機関がルールブックを作っておる。
海上輸送ではIMDGコード(国際海上危険物規程)、航空輸送ではIATA DGR(国際航空運送協会の危険物規則書)が事務つで広く使われておる。
ルールの成り立ちの詳細はなかなか複雑じゃから、まずは「海と空でルールブックが違う」という点だけ押さえておけば十分じゃよ。
輸送手段ごとにルールが異なる
・海上輸送ではIMDGコード(国際海上危険物規程)
・航空輸送では実務上IATA DGR(国際航空運送協会の危険物規則書)
*他にも、陸上輸送のADRなどもあります。



今回のシリーズでは、海上輸送上の危険品(IMDG)ベースで話を進めていくぞ。
普通貨物と何が違うの?



なんとなくイメージが掴めてきました。でも、ルールが違うって言われても、正直まだピンと来なくて……。実際の業務で、普通貨物と比べて「ここが違う!」って感じる場面って、具体的にどんなところなんですか?



よし、それなら実務目線で話そうかの。例えばブッキング一つとっても、普通貨物とはまるで違う。



ブッキングがですか?普通貨物なら、品名と数量を伝えればすぐ番号がもらえますよね。



そこが違うんじゃ。危険品の場合、船社へ危険品の情報を事前に提出し、「DGアプルーバル」と呼ばれる積載承認を取らねばならん。この承認が下りない限り、ブッキング番号そのものが発番されないんじゃよ。



え、じゃあ承認が出るまでは、スペースを確保できているかどうかも分からないってことですか?



その通り。じゃから危険品案件は、普通貨物よりも早め早めに動く必要がある。船社側で積付け計画(他の貨物との離隔をどう取るか)を検討する時間が要るし、そもそもその船が危険品を受け付けているかどうかも、船によって違うからの。



なるほど……。じゃあカット日(船積み締切日)も、普通貨物と違ったりするんですか?



うむ、よく気づいたの。危険品は書類CUTと貨物CUTが別日のことも多いんじゃ。
通常、危険品はCYやCFSで保管することができないケースが多く、貨物CUT日の当日や貨物CUT日翌朝一搬入など、ピンポイントで貨物搬入日を指定されることもあるぞ。



準備する書類も違うんですか?



危険品の場合、通常の輸出書類に加え、「SDS」、「事前連絡表」、「危険物明細書」といった書類が必要になるから注意が必要じゃ。



もしかして、保管や梱包、輸送の面でも違いがありますか?



大ありじゃ。危険品は、一般貨物のように普通の倉庫に置けるとは限らん。消防法などの法令に基づいた許可を持つ「危険品倉庫」での保管が必要になる物質も多いんじゃ。
「UN梱包」と呼ばれる危険品用の梱包が必要じゃし、中身が危険品だと分かるようラベル貼りも必要じゃ。輸送の際も、コンテナにプラカードと呼ばれる表示の貼り付けが必要なんじゃ。



書類、ブッキング、カット日、保管、輸送……本当に一つひとつ違うんですね。普通貨物の感覚でいると、あちこちでつまずきそうです。



そうじゃな。じゃが安心せい。これらは今日全部覚える必要はない。それぞれの詳しい中身は、これから一つずつ取り上げていくからの。



あ、そういえば、消防法の「危険物」っていう言葉も聞いたことがあります。これも今のIMDGの話と同じものなんですか



良いところに気づいたの。実はIMDGコードと消防法は、まったく別の物差しなんじゃ。塗料や溶剤のように、IMDG上の危険品にも消防法上の危険物にも両方該当するものは多い。じゃが中には、IMDG上は危険品でも消防法には該当しないもの、逆に消防法上は危険物でもIMDGには該当しない(UN番号が付かない)ものもある。



え、両方に当てはまるとは限らないんですか……これは混乱しそうです。



じゃろうな。じゃが今日のところは「IMDGと消防法は別のもので、該当するかどうかも別々に判断する」ということだけ覚えておけば十分じゃ。
危険品が普通貨物と異なる主なポイントを整理すると、次のようになります。
書類:通常の輸出書類に加え、「SDS」、「事前連絡表」、「危険物明細書」といった書類が必要になります。
ブッキング:危険品の情報を事前提出し、船社の積載承認(DGアプルーバル)が下りなければブッキング番号が発番されません。
カット日:書類CUTと貨物CUTが異なることが多い。貨物搬入はピンポイントで日にちを指定され、前もって搬入できないことも。
保管:消防法等に基づく許可を持つ危険品倉庫での保管が必要になる場合がある。
梱包・輸送:危険品用の梱包(UN梱包)やラベル表示が必要。輸送の際も、コンテナにプラカードの表示が必要。
該当法令:IMDGコード(国際輸送ルール)と消防法(国内法)は別の物差しであり、両方に該当する物質もあれば、どちらか一方にしか該当しない物質もあります。
まとめ



危険品の意味と、海と空でルールが違うこと、そして普通貨物とは手配も違うことが分かりました。
でも、実際の業務ではまだまだ迷うことがたくさんありそうです…



詳しくは次回以降の記事で、複数回に分けて説明するとしよう。
~危険品シリーズで配信予定の記事~
●UN番号とは?危険品を識別する基本情報
●危険品書類編 (SDS・事前連絡表、危険物明細書)
●UN梱包、危険品ラベル・プラカード編
●実務編



これらを読めば、より危険品について理解できるんですね。



今日はあくまで地図を描いただけじゃから、それぞれの中身はまだ詳しく話しておらん。次回からは、一つずつ掘り下げていくことにしようかの。


危険品とは、輸送中に人命や輸送機関、他の貨物、環境へ危険を及ぼすおそれがあるとして、国際ルールで分類・規制されている物質や物品です。ヘアスプレーやリチウムイオン電池など、私たちの身近な製品も数多く含まれます。
また、危険品輸送では、海上と航空で適用されるルールが異なるほか、ブッキング承認(DGアプルーバル)やカット日、危険品倉庫での保管など、普通貨物とは異なる手続きが数多くあります。
今回の記事では、危険品輸送の全体像をご紹介しました。今後のシリーズでは、それぞれのルールや手続きについて、一つひとつ分かりやすく解説していきます。ぜひ引き続きご覧ください。
記事管理No.: 048-01-260731




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