
キツネくんはLA在住。いつも新しいビジネスチャンスはないかと、狐視眈々(?)と目を光らせています。
今回目を付けたのは、ビンテージギター。
でも、なんだか問題がありそうです。
木製ギターが輸出できない?
キツネくんフクロウ博士~!ちょっと困ったことになっちまったんだよ。



おや、キツネくん。どうしたんじゃ?



日本で販売しようと思って、こっちでビンテージギターを仕入れたんだ。ところが日本に送ろうとしたら、通関業者から『素材に「ローズウッド」と書かれていますね』って確認されちゃって。



ほう。それは確認しておいたほうがよいのう。



でも博士、ギターだよ? 素材が関係あるのか?



それが、あるんじゃ。『ワシントン条約』という言葉を聞いたことがあるじゃろう。


そもそも「ワシントン条約」って何?



ワシントン条約って、象牙とか珍しい動物を守るための条約じゃないのか?



それだけではないぞ。まずは、「ワシントン条約とは何か?」という説明をしよう。
ワシントン条約とは?
- 正式名称:『絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約』Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora
- 1973年にアメリカ・ワシントンD.C.で採択されたことから、日本では「ワシントン条約」として知られるが、海外では一般に英語の頭文字をとって『CITES(サイテス)』とも呼ばれる。
- 目的と構成:ワシントン条約は、野生動植物が国際取引によって過度に利用され、絶滅の危機にさらされることを防ぐための国際的なルール。 対象となる動植物は、絶滅のおそれなどに応じて「附属書Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」に分類され、それぞれ取引のルールが定められている。



でも俺が輸入したいのは植物じゃなくて、ギターだよ?



そこがポイントじゃ。対象になるのは、動植物そのものだけではない。
例えば、木材、皮、象牙など、対象となる動植物を使った製品も規制の対象になる場合がある。



あ、つまり、貴重な動物の皮を使ったカバンがNGになる、とかだな。



さすが、理解がはいいのぉ。つまり、『ギターだから』ではなくて、『何が使われているか』が問題なのじゃ。
なぜ、このギターがワシントン条約に?



俺のギターは、ローズウッドで引っかかっただろ。ローズウッドは何でも取引NGなのか?



そう単純でもないんじゃ。
ローズウッドといっても、種類は様々じゃ。CITESの付属書には具体的に学名が書かれており、それによって扱いが違う。
付属書Iには、ブラジリアンローズウッド(Dalbergia nigra)が記載
付属書IIには、上記を除くDalbergia属(ツルサイカチ属)の全種が記載されている。例えば、
- インディアンローズウッド(Dalbergia latifolia)
- マダガスカルローズウッド類(Dalbergia baronii、D. greveana、D. madagascariensis など)
- ココボロ(Dalbergia retusa)
- ホンジュラスローズウッド(Dalbergia stevensonii)
- キングウッド(Dalbergia cearensis)
- アフリカンブラックウッド(Dalbergia melanoxylon)
- シャムローズウッド(Dalbergia cochinchinensis) など。



なんだかわけがわからないけど、「ローズウッドって書いてあるから対象」「書いてないから対象外」とは判断できないんだな。



その通り。だから学名まで確認することが大切なんじゃ。
では、輸出入はできないの?付属書I, IIの違いは?



付属書IとIIの違いって何なんだ?



ざっくり言うとこんな感じじゃ。
| 附属書Ⅰ | 附属書Ⅱ | |||
| 対象 | 絶滅のおそれのある種 | 現在必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を規制しないと存続を脅かす可能性がある種など | ||
| 商業目的の国際取引 | 原則禁止 | 条件を満たせば可能 | ||
| 基本的な手続き | 輸出国・輸入国双方の許可が必要 | CITES上は基本的に輸出国の輸出許可が中心 | ||
| 規制の強さ | 非常に厳しい | Ⅰより緩いが、自由に取引できるわけではない | ||



つまり、付属書Iのほうが厳しくて、付属書IIは少し緩いんだな。
じゃぁ、俺のギターの素材が付属書Iだったら、どうなるんだ?
- ブラジリアンローズウッド(Dalbergia nigra)は現在、附属書Ⅰ。基本的に、この素材が使われていたら、商業目的の国際取引は原則禁止。
- しかし、アンティークということで、「条約適用前取得(Pre-Convention)」として輸出入できる可能性があります。
- ブラジリアンローズウッドが付属書Iに掲載されたのは、1992年6月11日。 したがって、ギターまたはそこに使われたブラジリアンローズウッドが1992年6月11日より前に取得されたことを証明できれば、「条約適用前取得(Pre-Convention)」として輸出入できる可能性があります。
- ただし、条約適用前に取得されたことを証明する必要があります。日本への輸入の場合、経産省は、輸出国のCITES管理当局等が発行した条約適用前取得証明書、または出所コード「O」の輸出許可書等を求めています。 証拠がない場合は厳しく、経産省も「明らかに条約適用前のものでも、証拠書類が一切存在しない場合は承認できない」としています。



そうかぁ、条約適用前にできた古い品は、余計に証明を入手するのも難しいし、ビンテージだからOKってわけでもないんだな。



その通り。やはりキツネくんは賢いのぉ。



じゃあ、もし付属書IIの、インディアンローズウッドだったらどうなるんだ?
- こちらは話が大きく変わります。インディアンローズウッド(Dalbergia latifolia)は附属書ⅡのDalbergia属に含まれます。
- 付属書II対象の品目は、輸出国でCITES輸出許可書を取得し、それを添付して輸入申請をします。
- ここでポイントです。2019年11月26日の改正によって、附属書ⅡのDalbergia属については、「完成した楽器+完成した楽器の部品+完成した楽器の付属品 は、CITESの規制対象から除外されました。」
- つまり、キツネ君が輸入するものが完成したギターで、使われているのがインディアンローズウッドであることが確認できれば、原則としてCITESの輸出許可・輸入承認は不要です。



お!じゃあ、ローズウッドでも、ブラジリアンでない、違う学名のだって証明できればいいってことだな。ラッキー!



そうじゃな、楽器は使用部分が小さく、環境に与える影響も少ないことから、規制から除外されておる。同様に、ローズウッドの部分が10kg未満の小さな家具や彫刻品も対象外となっておる。



なるほど。環境保護が目的で、理由があっての分類ってことなんだな。


キツネ君、いざ手続きへ!



よし、まずは、ギターの情報をもう一度調べて、通関業者に出してみるよ。



うむ。順番に解決していけば、道が開けるからのぉ。



ワシントン条約では保護されない、一匹キツネの俺の力、見せてやるぜ!
と、妙な意気込みを見せるキツネくん、頑張って!
さて、次回は、まだまだあります、「え、これも?」と思うようなワシントン条約に関係するよう注意商品を、一緒に学んでいきましょう。
記事管理No.: 039-01-261015







